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こんなんでイイのか?!

詩…っぽいモノを綴って見たりするブログ。
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  • 05/14/09:07

シュジン

契賭が先を歩き、その後に戒が続き、契賭のバクが仕留めたバクを引きずって戒の後ろに続く。
戒は後ろを振り返りたくなかったのもあってか、黙々と俯いて歩いていた。
まるで連行される罪人の気分だ・・・。

―YUME―2

「ただいま、叶・・・」
「・・・契賭・・・」
何も無いこの空間でどうやってたどり着けたのか、契賭は帰るべき場所に帰り着いたようだ。
そこに居たのは、小さな女の子。そして無数のカケラ。
(・・・また女の子・・・)
先程は見ず知らず女の子に酷い目に合わされた。軽くトラウマにもなる。
そんな戒を無視して契賭は、『かな』と呼んだその女の子に嬉しそうに話す。
「見て、叶。こんなに『願い』を持ったバクを仕留めたんだよ」

叶の為に

その様子に、戒は一つ気付いた。
この男は、契賭は・・・

この少女の為だけに“生きている”んだ・・・

でも、それは何故・・・?

「叶のバクに食べて欲しいんだ。そうしたらまた、叶のバクが成長できるから・・・」
「・・・そう・・・」
嬉しそうに話す契賭とは対象的に、叶は無表情に小さな反応。
そしてその身体から小さな紅い光が溢れ出す。
「じゃあ・・・頂くわ・・」
やがて光は彼女のバクの姿を形作り始める。
(オルガン・・・?)
現れたのは一台のオルガン。あれがバクなのか・・・?
(――いや、違う・・・!)
見ると、オルガンを背後から抱えるように樹木のような“胴”が現れた。
その幹の伸びた先に大きな目玉が一つ。幹はさらに伸び、先端が見えない。
(オルガンも含めた、この全体が一体のバク・・・!)
なんて・・・巨大なんだろう・・・
思わず怯んでしまいそうになった。それほどまでに、彼女のバクは巨大だった。
バクは『願い』を喰って成長する。それだけ犠牲になった者たちが居たのだろう。


―続く―

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ハジマリ

目覚めたのは闇の中

感じたのは異質な浮遊感

頭に浮かんだ疑問はありふれたものだった


「・・・俺は・・・」

何故ここに居る・・・?



―YUME―



(何だ・・・ココは・・・? 何も無い・・・)
暗闇の中、戒はその身体を起こした。
地面は地面とは思えず、確かに立っているはずなのに浮遊感を伴う。
不思議と、暗闇の中だというのに己の身体はハッキリと見えた。
ぼうっと浮かび上がったように見える手の平を見て、それから顔を触る。
いつも通りの己の身体・・・。
「う・・・っ」
不意に頭痛が襲った。
(・・・俺は・・・何故ここに居る・・・?)
思い出そうとしてまた頭痛に襲われる。
それでも懸命に記憶を手繰り寄せる。
(・・・そうだ・・・!)

・・・雨が降っていた
ザアザアと耳に痛いほど響く雨音
それと共に聞こえた車のクラクション音
遠くからは救急車のサイレンが聞こえる
目の前に広がる灰色の空
土臭い雨の雫が朱い流れを作り出す
口の中に鉄の味と臭いが広がる
冷たくなった身体はもう痛みも感じなかった

(俺は・・・)
「・・・っ!!」
気付いた途端、左胸のちょうど心臓の辺りに、刺すような痛みを感じた。
「痛いの・・・?」
蹲る戒の耳に、幼い声が届いた。
(――女の子・・・?)
振り返ると、何処から現れたのか一人の少女が居た。
やはり、闇に浮かび上がるようにハッキリとその姿が見えた。
何故こんな所に女の子が居るのかなんて、もう考えなかった。
ここは“現世”ではないはずなのだから・・・。
「あなたも・・・『願い』があったの・・・?」
「・・・『願い』・・・?」
疑問に疑問で返せば、少女はニッと笑って見せた。
「そう・・・。この世界に引き込まれるほどの強い『願い』・・・」
そう言っている少女の身体から、青白い光の玉が溢れ出す。
光の玉は一ヵ所に集まり、大きな塊を形作る。
「その『願い』・・・、頂戴」
やがて固まりはハッキリとした姿をとる。
「?!」
怪物。そう称するのが一番正しいのだろう。
胴体と思われる部分は巻貝の様な形で、底の部分は大きな口に見え、上を向いていた。
その上に二つの球体。少女の頭よりも一回り大きいそれは目玉だった。
口と思しき場所から触手の様に伸びる物があった。その先端は胴体と同じ巻貝のような形だが、ドリルの様にも見えた。
最後に、胴体から蝙蝠の様な翼が生えていたが、鳥や蝙蝠のように対になってはおらず、片翼のみが呼吸するように開閉を繰り返していた。
(何だ・・・これ・・・)
目の前にあるのは現実か夢か・・・?
・・・いや、現実でも夢でもない。
(あぁ、そうか・・・、ここは“あの世”だから、こいつらは『鬼』なんだ)
“現実”の世界にあらず、しかしそこに確かに存在する。
(俺はこいつらに・・・喰われる・・・!!)
これは真実なのだろうと悟った。
ドリルのような触手が、戒の喉元に突き立てられる。
―ドシュッ―
「!!」
鈍い音が響く。
戒の目に映ったのは、青黒い突起の様なものが胴体に刺さった、あの怪物の姿だった。
「いっ・・・」
中に浮かんでいたその体が、ぐらりと揺らいだ。
「いやぁぁぁぁあぁぁああああぁぁあっっ!!!!!」
-ドドドドッ―
少女の叫びと、次々と怪物に突起が突き立てられる鈍い音が空間を満たした。
―ドドドドドドド―
「ぁっ・・・かはっ・・・」
少女の口から、朱い霧が吐き出される。
怪物は倒れ、少女も共にに倒れた。
「・・・・・・、何・・が・・・?」
一瞬の出来事に、戒はただ呆然としていた。

「おや、こんな所にも獲物が・・・」

「な」
低く耳元に囁かれた声に驚き振り返る。
―べチン―
「っ?!」
「あっはっはっはっはははは・・・! 冗談だよ!」
デコピンをされた。
そこに居たのは、人当たりの良さそうな笑顔をした男だった。
長身で金色がかった茶髪は少々伸びていた。
「大丈夫?君、ここには来たばかりだろ」
「・・・あぁ・・・」
男は戒の顔を覗きながら、楽しそうに笑っていた。
「僕は契賭。君は?」
「・・・戒。・・・あの女の子は・・・」
「あぁ・・・」
戒が先程の少女を示して聞けば、契賭は変わらぬ笑顔のまま答えた。
「死んだよ」
「死んだ・・・?! でも・・・っ」
驚きの表情を隠せない戒。それもそのはずだ。
「ここはもう・・・“あの世”なんじゃ・・・」
自分は死んだはずだ。そしてあの少女も。
ここに居るということは、そういう事になるはずだ。
それでもなお“死ぬ”というのは・・・?
「そうだね・・・、ここは死んだ人間の来る場所だ・・・。
 しかし本当の”あの世”ではないんだよ」
『ならばここは何処なのか・・・?』
浮かんだ疑問は契賭にも通じたらしい。
「答えるとすれば、ここは狭間・・・。『夢現の狭間』だよ」
薄い笑顔の契賭から、先程の少女と同じ青白い光の玉が溢れ出る。
そして先程と同様、大きな目玉を持つ怪物の姿が現れる。
「さっきのヤツと・・・同じ・・・?!」
しかしその姿形は全く違う。
木の枝のような菱形の枠に目玉が三つ、縦に並んで収まっている。
その周りを衛星の様に二つの目玉が飛んでいる。
「これは『バク』だよ」
バクは戒の横を通り過ぎ、少女に近付く。
「バク?って、あの夢を喰うっていう・・・」
「そうだよ。ただし、食べるのは夢じゃない」
契賭が言い終わるか終わらないかのうちに、目の前で“食事”が始まった。
―ドシュ―
バクの体(?)が変形し、枠から先程のバクを貫いた物と同じ突起が生えてきた。
その突起を少女に突き立てる。
―ブシュッ・・・ズ・・・―
「―――っ!!」
吐き気がした。
”死んで”いるとはいえ、人間の体に穴が開く瞬間は、良いものと言えるはずが無かった。
突起の刺さった部分から、生臭い流れが生まれる。
「この世界に居る人間は皆、現世での“想い”や“願い”に捕らわれ、“あの世”にも逝けず、この『狭間』へと堕ちた者たちだ。
 この世界に堕ちると、その魂を元に仮の肉体が与えられ、己を縛る『願い』はエネルギーとなる」
体に刺さった突起から、バクが何かを吸い出したように見えた。
吸い出した物を体内に吸収して、バク自身がドクンと脈動する。
「堕ちた人間が有する『願いのエネルギー』は、バクたちが成長するための糧となる。
 『願いのエネルギー』が無くなれば、この世界での“死”に至る・・・」
バクが“食事”を終え、少女から離れる。
その亡骸から、バクが現れた時とは違う、紅い光が溢れ出る。
「元になっていた魂は消滅し、器となっていた仮の肉体はカケラになって残る」
紅い光が小さなクマのぬいぐるみの形となる。それと同時に、少女の体は消えた。
残されたクマのぬいぐるみが、虚しく宙に漂う。
「・・・じゃぁ・・・、残ったカケラはどうなる・・・?」
少女のカケラを見つめ、戒が再び問いかける。
契賭はそのカケラに手を伸ばす。
「この世界を彷徨う・・・」
契賭はその手にすっぽりと収まったクマのぬいぐるみを見つめながら、言葉を続けた。
「彷徨って・・・、零れ落ちている『願い』のエネルギーを溜め込んで・・・、また新たなバクになる」
そのバクがまた『願い』を喰らい、カケラが生まれる。
それはまるで・・・
「まるで食物連鎖だ・・・」
絶望とも言える思いに侵された。戒の顔に、乾いた笑みが張り付く。
「この世界で“生きる”意味が無い・・・」
「いいや」
戒の言葉を、微笑を浮かべた契賭の言葉が遮った。
「“生きる”意味は有る・・・」
契賭はバクを従えて、暗闇の中を歩き出す。
「付いておいで」




―――続きます―――
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